本記事では、共感を呼ぶブランドコンセプトの事例を通して、コンセプトがどのように生まれ、機能しているのかを整理します。

選ばれ続けるブランドの背景にある
顧客に残したい印象や感覚の設計を紐解いていきます。

ブランドコンセプトと企業理念・MVVの違いについては、以下の記事で整理しています。
🔗 ブランドコンセプトは顧客へのメッセージ!考え方と設計手順を知れば、企業理念・MVVが価値として伝わる!

1. ブランドコンセプトとは何か

ブランドコンセプトとは、「そのブランドが、なぜ存在し、どんな価値を提供するのか」を顧客視点で言語化したものです。 企業のミッションや価値観を、顧客に伝わる形に翻訳した「企業から顧客への約束」と考えることもできます。

ロゴやキャッチコピーを指すのではなく、あらゆる表現・施策・意思決定の基準となる考え方だと言えます。

  • 誰に向けた存在なのか
  • どんな気持ちになってほしいのか
  • どんな場面で思い出されたいのか

強いブランドほど、上記が意識されています。

2. 事例紹介|共感を生んだブランドコンセプト

ここでは、ブランドコンセプトが「言葉」ではなく体験や印象として機能している事例を紹介します。共通しているのは、キャッチコピーの巧さではなく、顧客の行動や感情の変化を起点に設計されている点です。

2-1. ベネクス(VENEX)

ブランドコンセプト:
「着るものでリカバリーする」

ベネクスは、医療機器やヘルスケア製品に対して抱かれがちな
「専門的」「特別」「使うのが大変」といった印象を覆したブランドです。

独自素材を用いたリカバリーウェアによって、
体のケアを日常生活の延長として取り入れるという発想を打ち出しました。

  • 特別な操作は不要
  • 着るだけでリカバリーできる
  • 日常生活の邪魔をしないデザイン

「着る医療」「着るリカバリーウェア」という言葉も、
こうした体験や印象を端的に表現した結果として生まれています。

2-2. QBハウス

ブランドコンセプト:
「10分の身だしなみ」

QBハウスは、美容室のように「おしゃれになる場所」ではなく、
髪型を維持するための生活インフラとして価値を設計しました。

  • カットのみ
  • 予約不要
  • 短時間

という設計によって、「髪を切る=時間を取られる」という印象を覆し、
忙しい人の生活リズムに溶け込む存在として、強い共感を生んでいます。

2-3. Kona’s Coffee

ブランドコンセプト:
「ハワイの空気を感じる、もう一つの日常」

Kona’s Coffeeは、
欧米系カフェでも喫茶店系カフェでもない
「ハワイアンカフェ」という独自の立ち位置を確立しました。

  • リゾート感のある空間
  • ゆったり過ごす時間
  • 非日常と日常の中間の体験

コーヒーの機能価値ではなく、
気分そのものを価値として提供している点が特徴です。

2-4. chocoZAP

ブランドコンセプト:
「簡単、便利で、楽しいコンビニジム」

chocoZAPは、「本格的に鍛えたい人」ではなく、
これまでジムに通い続けられなかった人をターゲットに設定しています。

  • 着替え不要
  • 洋服のまま利用できる
  • 入館してすぐに運動を始められる

といった体験設計によって、
「運動=面倒」「ジム=ハードルが高い」という印象を大きく変えました。

このブランドコンセプトは、頑張らなくてもいいジムという感覚を先に顧客に届け、その結果として利用が定着しています。

2-5. 大戸屋

ブランドコンセプト:
「こころを満たす、もう一つの食卓」

大戸屋は1958年、池袋の大衆食堂として事業をスタートしました。
戦後間もない1950年代、日本では「4人に1人が栄養不足」と言われる時代背景がありました。

家庭で食べるような、栄養のある温かい食事を、手頃な価格で、誰でも安心して食べられる場所をつくりたい。その思いが、このブランドコンセプトにつながっています。

創業当時の思いを記した「かあさん額」を全店舗に掲げることで、
コンセプトを現場と顧客の双方に浸透させています。

2-6. AKB48

ブランドコンセプト:
「会いに行けるアイドル」

「会いに行けるアイドル」というコンセプトは、その後のアイドルビジネスをはじめとするエンタメ業界に大きな影響を与え、現在でも模範・参照され続けています。

  • 劇場での定期公演
  • 握手会などのリアルな接点
  • 成長過程を共有できる仕組み

これらの体験を通じて生まれたのは、
「応援している」というより、「関わっている」という感覚です。

ファンとの距離感そのものを再設計した点が、
AKB48のブランドコンセプトの本質だと言えます。

2-7. Apple(iPod)

ブランドコンセプト:
「1,000曲をポケットに」

この言葉は、製品コピーを超えた生活の変化を象徴するブランドコンセプトとして
伝説的に語り継がれています。

iPodは、のちに登場するiPhoneの前身とも言える存在であり、「デバイスの価値はスペックではなく、生活体験にある」というAppleの思想を決定づけました。

iPod登場以前の音楽プレイヤーは容量や性能といったスペック競争の文脈で語られていました。しかしAppleは、「音楽のある生活がどう変わるか」を一言で表現しました。

  • 好きな音楽をいつでも持ち歩ける
  • シーンや気分に合わせて音楽を選べる
  • 日常が少し豊かになる

といった体験や印象が自然に連想されます。

ここでも、印象や思想が先にあり、それを最も直感的に表した言葉が後から生まれている
という構造が見て取れます。

3. 強いブランドが設計していること

ここまで見てきた7つの事例には、業種や時代を超えて共通する重要な考え方があります。
それは、ブランドコンセプトは最終的に言葉として表現されるものの、その出発点は言葉ではなく、顧客に残したい印象や体験にあるということです。

3-1. 先にあるのは「印象」である

強いブランドでは、必ず先に印象や感覚が設計されています。

  • ベネクスなら「何もしなくても回復に近づける」
  • QBハウスなら「時間を取られない」
  • 大戸屋なら「家に帰ってきたような安心感」
  • iPodなら「音楽を持ち歩ける自由」

これらは、最初から言葉として存在していたわけではなく、
意図した印象や期待が生まれるように設計された結果です。

3-2. 言葉は印象を固定するためのもの

ブランドの印象を、社内外で共有できる形に落とし込んだものが、
ブランドコンセプトやキャッチコピーです。

  • 「着るものでリカバリーする」
  • 「10分の身だしなみ」
  • 「こころを満たす、もう一つの食卓」

いずれも、言葉として見るとシンプルですが、
背後には必ず具体的な印象や体験が存在しています。

3-3. 表現は印象と言葉を定着させるもの

最後に来るのが「表現」です。
ロゴ、広告、Web、店舗、商品、接客、UI、価格設定など、
あらゆるタッチポイントは、
そのブランドコンセプトが本物かどうかを試される場になります。

  • 言葉と体験がズレている
  • キャッチコピーだけが先行している
  • 現場の行動と思想が一致していない

こうした状態になると、ブランドはすぐに形骸化します。

逆に、印象 → 言葉 → 表現の順番が守られているブランドは、
説明しなくても「らしさ」が伝わり、自然と共感が生まれます。

ブランドコンセプトは、きれいな言葉を考える作業ではなく、

  • どんな印象を残したいのか
  • どんな存在として思い出されたいのか
  • どんな場面で選ばれたいのか

これらを先に設計し、
その結果として言葉や表現を選ぶことが、今回紹介したすべての事例に共通する
機能するブランドコンセプトの本質です。