ブランドコンセプトは、企業のMVVに基づいた思想を、顧客視点で伝えるメッセージを指します。同時に、ロゴやビジュアル、広告表現、Webサイトなど、あらゆるブランディングの起点となる概念です。
しかし、ブランドコンセプトは、企業理念やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)との違いが曖昧になっているケースが多く、その結果、言葉やビジュアルが似通ってしまうことが多いです。
本記事ではそれぞれの役割と関係性を整理し、何を最初に考え、どの順番で設計すべきかを体系的に解説します。
ブランドコンセプトは社外への発信だけでなく、社内の意識や行動によっても形づくられます。
🔗「企業ブランドは『外』と『内』でつくられる|アウターブランディングの基礎と役割」
1. ブランドコンセプトとは何か
ブランドコンセプトは、企業のMVVに基づいた思想を、顧客視点で伝えるメッセージを指します。単なるキャッチコピーやスローガンではなく、企業文化・製品・サービス・顧客体験の起点となる、ブランディングにおいて欠かすことのできない概念であり、顧客に向けて企業が示す「約束」と考えることもできます。
1-1. ブランドコンセプトの基本的な考え方
ブランドコンセプトが明確であれば、「どの市場で戦うのか」「誰に価値を届けるのか」「何を強みにするのか」、企業のあらゆるブランド表現や意思決定に一貫した軸が生まれます。
逆にコンセプトが曖昧だと、表現やメッセージに統一感がなくなり、「この会社は何を大切にしているのか分からない」「このブランドを選ぶべき理由が伝わらない」という印象を与えてしまいます。
そのため、ロゴやビジュアル、広告表現、Webサイトなどは、すべてブランドコンセプトを起点として設計されるべきものです。
1-2. ブランドコンセプトの定義
これまでの前提を踏まえると、ブランドコンセプトは次のように定義することができます。
- あらゆるブランディングの起点となる概念。
- MVVを顧客が理解できるように言語化したもの。
- どんな価値を提供し続けるのかという企業から顧客への約束
2. ブランドコンセプトを積極的に活用する
ブランドコンセプトは掲げて終わりではなく、社内の意思決定や社外へのコミュニケーションを一貫させるために、積極的に活用することで意味をなします。
2-1. 社内でコンセプトを共有する
ブランドコンセプトは社内で共有されていることが重要です。「自分たちのブランドは何を大切にしているか」。社員一人ひとりに共有されてはじめて、外に向けたブランド体験を提供できます。
① 社内共有によって得られるブランド効果
- 商品・サービス開発の判断基準が明確になる
- マーケティングや広報の方向性が揃う
- 部署や担当者ごとの認識差が減る
② 社内でコンセプトを共有するポイント
ブランドコンセプトを社内に活用するために重要なのは、「共有すること」だけではなく「実際の判断と行動に組み込むこと」です。
そのためには、
- 経営層・マネージャーが言動で体現する
意思決定や評価を通じて「ブランドらしさ」を示す。 - 繰り返し触れる仕組みをつくる
研修・資料・採用・評価など、あらゆる場面に組み込む。 - 企業理念・ミッション・バリューとの関係を整理する
どの思想を、どこで基準に使うのかを明確にする。 - 日常業務の判断軸として使える形にする
商品開発・表現・顧客対応などで問いとして機能させる。
この土台が整ってはじめて、
ブランドコンセプトは社内の共通言語となり、
次に紹介する「社外への一貫した発信力」となります。
2-2. 社外にコンセプトを発信する
ブランドコンセプトは、顧客や社会に対して「このブランドは、何を大切にし、どのような価値を提供し続けるのか」が伝わって初めて本来の役割も果たします。
① 社外発信によって得られるブランド効果
ブランドコンセプトを社外へ発信することで、
単なる情報発信を超えた、次のようなブランド効果が生まれます。
- 顧客に「このブランドを選ぶ理由」が直感的に伝わる
- 競合との違いが、機能や価格以外の軸で認識される
- 接触するたびに、同じ世界観・価値観が積み重なる
重要なのは、
コンセプトを説明することではなく、できるだけ体験として伝えることです。
② 社外へコンセプトを発信する際のポイント
ブランドコンセプトは、以下のような接点で一貫して表現される必要があります。
- Webサイト・LP・SNS
コピー、ビジュアル、構成が
「ブランドが大切にしていること」を語っているか。 - パンフレット・広告・プロモーション
短い言葉やビジュアルにもブランドの姿勢や価値観が出ているか。 - プロダクト・サービス体験
機能や品質だけでなく、使ったときの印象がコンセプトと一致しているか。 - カスタマー対応・コミュニケーション
問い合わせ対応やサポートの姿勢がブランドの約束を守っているか。
どこか一つでもズレると、
顧客は「言っていることと、やっていることが違う」と感じるようになってしまいます。
とくにWebサイトでは、コーポレートサイトとサービスサイトの役割を正しく分けて設計できているかが、ブランドコンセプトの伝わり方を大きく左右します。
🔗「企業ブランドを強くする|コーポレートサイトとサービスサイトの違いと正しいつくり方!」
3. ブランドコンセプトの設計方法
本章では、ブランドコンセプトと混合しやすい企業理念・MVVとの違いを整理したうえで、コンセプトの設計に役立つ代表的な分析手法を紹介します。
3-1. 企業理念とMVVとの違いを知る
ブランドコンセプトを的確に設計するために用いられるのが、企業理念やMVVです。それぞれが担う役割を知っておくことで、ブランドコンセプトの設計がスムーズになります。
| 項目 | 答えている問い | 主な対象 | 時軸軸 | 役割・意味 |
| 企業理念 | なぜこの会社は存在するのか | 社会・ステークホルダー | 恒久的 | 企業の思想・存在意義の源泉。すべての判断の最上位概念 |
| ミッション | 存在意義を何によって果たすのか | 社会・市場 | 中長期 | 事業を通じて果たす社会的使命・役割 |
| バリュー | 使命をどんな姿勢・価値観で実行するのか | 社内・行動 | 日常 | 判断・行動の基準。企業文化・組織のあり方 |
| ビジョン | ミッションを果たした先に、どんな未来が実現するのか | 社会・社内顧客 | 長期 | 目指す世界観・到達点。 |
| ブランドコンセプト | 企業理念やMVVを顧客にどう伝えるか | 顧客 | 現在〜未来 | 顧客が選ぶ理由。思想を顧客理解の言葉に翻訳した約束 |
① 企業理念
企業理念は、企業が「なぜ存在するのか」を示す最上位の思想であり、主に社内外すべてのステークホルダーに向けて掲げられる存在意義です。
この企業理念が揺らいでしまうと、その下にあるミッションやバリュー、ブランドコンセプトも一貫性を保つことができません。つまり、企業理念はブランドコンセプトの土台となる考え方だと言えます。
② MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)
企業理念を事業を通じてどのように果たすのかを示したものがミッションです。
そして、その使命を実行する際の判断基準や行動指針となるのがバリューです。
最後に、ミッションを果たした先にどのような未来を実現するのかを描いたものがビジョンです。
ブランドコンセプトはMVVのミッションと重なる部分があります。
3-2. コンセプト設計に役立つ分析手法
ブランドコンセプトは「理想」を語るものではありますが、同時に「現実」から大きく乖離していてはいけません。自社が置かれている環境や、顧客・競合との関係性を正しく理解することで、「守り続けられる約束」として成立します。
ここでは、ブランドコンセプトを設計する際に有効なSWOT分析と3C分析を紹介します。いずれも、戦略立案のためではなく、ブランドの軸を見つけるための整理手段として捉えることが重要です。
① SWOT分析
SWOT分析は自社を取り巻く内部要因・外部要因を整理するフレームワークです。
企業の強みを並べるよりも、「何をやらないか」「どこでは戦わないか」を決めるために使うと、
ブランドコンセプトの輪郭がより自然にはっきりします。
SWOT分析では、次の4つの視点から自社の立ち位置を分析します。
- Strength(強み)
自社が持つ独自性や、他社に対して優位に立てる点 - Weakness(弱み)
構造的に不利な点や、無理に補おうとすべきではない領域 - Opportunity(機会)
市場環境や社会の変化によって生まれる追い風 - Threat(脅威)
競争環境や外部要因によって生じるリスク
続いて、分析結果を次の視点で整理していきます。
- その強みは、企業側の都合ではなく、
顧客にとって「価値」として認識されるものか - 弱みは、無理に克服すべき課題ではなく、
「あえてやらない理由」として整理できているか - 機会と脅威を踏まえたとき、
どの市場・どの立ち位置で戦うのが最も自然か
これらを何度も検討することで、「約束すべきこと」が見えてきます。
② 3C分析
3C分析は、ブランドがなぜ選ばれるのかを整理するためのフレームワークです。SWOT分析が「自社を取り巻く環境」を広く捉える分析だとすると、3C分析は 「誰に、どんな約束をするブランドなのか」を具体化するための分析 と言えます。
3C分析では、次の3つの視点から自社の立ち位置を分析します。
- Customer(顧客)
顧客のどんな選択を取りにいくのか - Company(自社)
価値を継続して提供し続けられるか - Competitor(競合)
競合はどんな価値観や世界観を語っているか
SWOT分析で「どこでは戦わないか」を整理し、
3C分析で「誰に・どんな約束をするのが最も無理がないか」を絞り込む。
この2つを通して、ブランドコンセプトは「企業の想い」だけでなく、
顧客にとって納得感のある約束として機能し始めます。
なお、本記事では紹介しきれませんでしたが、ブランドコンセプトの設計をより俯瞰的に捉えるためには、その上位概念である CI(コーポレート・アイデンティティ) を知ることも欠かせません。
今回の記事と合わせて確認し、ブランドコンセプトの本質をさらに深く知っていきましょう。
🔗「中小企業のための『CI戦略入門』|経営とブランディングを一体化する考え方と事例」
