社内データの保存と共有に、NAS(ネットワーク接続型ストレージ)を導入している中小企業は多いのではないでしょうか。

しかし数年運用していると、ある日突然「ディスク容量が不足しています」という警告が表示されることがあります。

「もう買い替えるしかないのか…」と諦める前に、試せる対処法があります。コストをかけずに今すぐできるものから、中長期で運用設計を見直す方法までを整理しました。

この記事では、それぞれの対処法のメリット・デメリット、自社に合う選び方の判断軸まで解説します。


結論|NAS容量不足の対処法は5つ|まず比較表で全体像

NASの容量不足に対処する方法は、大きく分けて以下の5つです。

No.対処法初期コスト即効性難易度
不要データの整理0円
HDDの増設・換装数万円〜
外付けHDDの併用1〜3万円〜
クラウドストレージへ一部移行月額数千円〜数万円
NAS本体の買い替え10〜30万円〜

いきなり買い替えに走ると過剰投資になることがあるため、「①でまず容量を確保 → ②③で中期対応 → ④⑤で根本見直し」という順序がおすすめです。

次の章から、それぞれの対処法を詳しく見ていきましょう。


対処法①|不要データの整理(まずここから)

最初に試すべきは、お金をかけずにできる不要データの整理です。意外と見落とされがちな「容量を圧迫している3つのポイント」を順に確認しましょう。

ゴミ箱フォルダの中身を確認

Buffaloの「LinkStation」「TeraStation」シリーズ、QNAP、Synologyなど、多くの法人向けNASにはゴミ箱機能があります。

たとえばBuffalo製NASでは、ゴミ箱機能を有効にしている場合、削除したファイルが「trashbox」というフォルダに一時保存されます。このフォルダは自動では削除されないため、放っておくとどんどん容量を圧迫します。

一方、QNAPやSynologyは設定で自動削除のスケジュールを組めますが、デフォルトでは有効になっていないケースもあるため確認が必要です。

NASのファイル一覧で「trashbox」「@Recycle」「#recycle」といった隠しフォルダがあれば、まず中身を確認してみてください。これだけで数十GB〜数百GB空くケースもあります。

対処法②|HDDの増設・換装(最も現実的)

不要データを整理しても容量が足りない場合、次に検討すべきはHDDの増設または換装です。中小企業の現場では、これが最も現実的な選択肢になることが多いです。

増設できるNASとできないNASの見分け方

NASには「ベイ」と呼ばれるHDDを差し込むスロットがあります。

  • 空きベイがある場合:新しいHDDを挿すだけで容量を追加可能
  • 空きベイがない場合:既存のHDDをより大容量のものに交換(換装)する

2ベイモデルや4ベイモデルが中小企業ではよく使われており、空きベイの有無は管理画面か機器本体で確認できます。

RAID構成での換装の基本手順

法人向けNASの多くはRAID構成で運用されています。RAIDは複数のHDDを組み合わせてデータを冗長化する仕組みで、1台壊れても他のHDDからデータを復旧できます。

RAID構成で換装する場合の一般的な流れは以下の通りです。

  1. 管理画面から対象HDDを取り外し処理
  2. 物理的にHDDを抜く
  3. 同容量以上の新しいHDDを挿入
  4. 自動でリビルド(再構築)が開始される
  5. リビルド完了を待つ(容量とRAIDレベルにより数時間〜半日かかる場合あり)

機種により手順は異なるため、必ずメーカー公式マニュアルを確認してください。

【注意】「RAID=バックアップ」の誤解は危険

ここで強調しておきたいのが、RAIDはバックアップではないということです。

RAIDは「HDDが1台壊れても動き続ける」ための仕組みであり、以下のような事態には対応できません。

  • ランサムウェアによるデータ暗号化
  • 操作ミスによるファイル削除
  • NAS本体の故障や落雷・水害

換装作業中にもう1台のHDDがエラーを起こすと、データが復旧不能になるケースもあります。作業前には必ず別媒体へのバックアップを取りましょう。


対処法③|外付けHDDの併用(応急処置として有効)

「すぐに容量を確保したい」「今は時間もお金もかけられない」という場合、外付けHDDの併用が手軽な選択肢になります。

NASに外付けHDDを接続する方法

多くの法人向けNASには、USB端子が搭載されています。市販の外付けHDDを接続して追加の共有領域として使えば、NAS本体の容量を補うことができます。

接続後、管理画面から外付けHDDを認識させ、共有フォルダとして設定すれば社内のPCからアクセス可能になります。

アーカイブ用に運用を分けるコツ

外付けHDDを使う場合は、「日常的に使うデータはNAS本体に、過去案件などのアーカイブデータは外付けHDDに」と用途を分けて運用するのが基本です。

  • メインNAS:直近1〜2年の業務データ(目安)
  • 外付けHDD:3年以上前のアーカイブデータ(目安)

この切り分けで、メインNASの容量を圧迫せずに運用できます。

短期対応にとどめるべき理由

ただし、外付けHDDは長期運用には向きません

  • 多くがRAID構成ではないため、故障時にデータを失うリスクが高い
  • 物理的に外れやすく、災害や盗難にも弱い
  • 続不良によるアクセス障害が起きやすい
  • 外付けHDDの寿命は3〜4年程度が目安で、長期運用には向かない

あくまで「次の対策を検討するまでのつなぎ」として使うのがおすすめです。


対処法④|クラウドストレージへの一部移行

近年、NASの容量不足解消の選択肢として注目されているのがクラウドストレージへの移行です。

クラウド向きデータ・向かないデータの線引き

すべてのデータをクラウドに移すのは現実的ではありません。データの性質に応じて使い分けるのが基本です。

向いているデータ向いてないデータ
Office文書(Word・Excelなど)大容量の動画・CADデータ
外部と共有するファイルリアルタイムで高速アクセスが必要なもの
アクセス頻度の低いアーカイブ数百MBを超える設計データ

代表的なクラウドサービス

中小企業でよく利用されるサービスは以下の通りです。

  • Box(法人向けクラウドストレージ):セキュリティと容量無制限(Business以上)プランで人気
  • Google Drive(Google Workspace):Googleアプリとの連携が便利
  • Dropbox Business:ファイル共有のしやすさに強み
  • OneDrive for Business:Microsoft 365とセット利用に最適

それぞれ料金体系・容量・機能が異なるため、自社の利用人数・データ量・使い方に合わせて選びましょう。(※詳細は各公式サイトにて要確認)

【現場あるある】「とりあえずクラウド全移行」が失敗するケース

(※STACK実例があれば挿入すると尚よし。例:士業事務所がBoxに全移行したが、通信速度の遅さや月額コストの累積で結局NASに戻した、など)

クラウド移行は便利ですが、「全部移行」は失敗のもとです。以下のような落とし穴があります。

  • 大容量ファイルの編集時に通信速度がボトルネックになる
  • 月額コストが想定の倍以上になる
  • 社員が操作方法に慣れず、結局NASに戻る

「NASとクラウドの併用」が現実的な落としどころになることが多いです。


対処法⑤|NAS本体の買い替え(最終手段)

ここまでの対処法でも対応できない場合、最後の選択肢がNAS本体の買い替えです。

買い替えるべきタイミングのサイン3つ

以下のいずれかに当てはまる場合は、買い替えを検討すべきタイミングです。

  1. 既存NASのベイがすべて埋まり、HDD換装でも容量が足りない
  2. 購入から5〜7年以上(機種により異なる)経過し、メーカーサポートが終了している
  3. データ量が今後2〜3年で倍以上に増える見込みがある

法人向けNASの相場(規模別の概算)

法人向けNASの価格は、必要なスペックや容量によって大きく変わります。一般的な目安は以下の通りです(2026年時点の情報)。

規模構成例本体価格目安
小規模(〜10名)2〜4ベイ・8〜16TB10〜20万円
中規模(10〜50名4〜6ベイ・16〜32TB20〜50万円
大規模(50名〜)6ベイ以上・32TB以上50万円〜

これにHDD代1〜5万円(容量による)が別途必要です。保守契約(年間数万円〜数十万円)も忘れずに見積もりに含めましょう。


自社に合う対処法の選び方|3つの判断軸

ここまで5つの対処法を見てきましたが、「結局うちはどれを選べばいい?」と迷う方も多いでしょう。判断軸は3つです。

①「今すぐ空けたい」場合 → 対処法①または③

  • データ消失や業務停止のリスクが目前にある
  • まずは時間を稼ぎたい

この場合は、不要データの整理(①)外付けHDDの併用(③) が即効性のある選択肢です。

②「中長期で容量を増やしたい」場合 → 対処法②または⑤

  • 業務拡大に伴ってデータが増え続けている
  • 今後3〜5年の運用を見据えたい

この場合は、HDDの増設・換装(②) または NAS本体の買い替え(⑤) を検討しましょう。

③「働き方を変えたい」場合 → 対処法④

  • リモートワークや外部との共有を増やしたい
  • BCP対策としてデータの分散保管をしたい

この場合は、クラウドストレージへの一部移行(④) が選択肢に入ります。


容量不足を防ぐ運用ルール|再発防止のために

容量不足は「対処」よりも「設計」と「日々の運用」で防ぐのが理想です。中小企業でもすぐ取り入れられる3つのルールを紹介します。

容量監視のしきい値設定

NASの管理画面では、空き容量が一定値を下回るとアラートを通知する設定ができます。

例えば、以下のようなしきい値を設定するのが目安です。

  • 70%超え:注意(増加ペースを確認)
  • 85%超え:警戒(整理・拡張を計画)
  • 90%超え:危険(即対応)

機種によっては、メール通知も設定可能です。

定期的なデータ棚卸しの仕組み化

「気づいたら容量がいっぱい」という状態を防ぐには、棚卸しの仕組み化が有効です。

  • 月1回:ゴミ箱・スナップショットの確認
  • 半年に1回:使われていないフォルダの洗い出し
  • 年1回:アーカイブ対象データの整理

担当者を決めて、カレンダーに登録しておくと運用が回りやすくなります。

「容量不足が頻発する=設計に課題あり」の視点

容量不足が毎年起きているなら、それは個別対応では解決しない運用設計そのものの問題です。

  • そもそもNASの容量設計が業務量に合っていない
  • バックアップとアーカイブの切り分けができていない
  • データ命名ルールや保存先のルールが社内で統一されていない

こうした根本課題を見直すタイミングと捉えると、長期的に安定した運用ができるようになります。


まとめ

NASの容量不足は、いきなり買い替えに走るのではなく、段階的に対処するのが基本です。

要点を3つに整理します。

  1. まずは①不要データの整理と③外付けHDDで時間を稼ぐ
  2. 中長期では②HDDの増設・換装か④クラウドの併用で運用を整える
  3. ⑤本体の買い替えは最後の選択肢として検討する

「容量が足りない」というのは、単なるトラブルではなく、NASの運用全体を見直すタイミングでもあります。場当たり的な対応ではなく、自社の業務量や働き方に合わせた設計を意識することで、無駄な投資を避けながら安定したデータ運用が実現できます。

ご不安な場合は、お気軽にご相談ください。