「セキュリティが心配だから、営業に勧められてUTMを導入した。でも、本当に効果があるのかわからない」——こうした声を、中小企業の経営者や担当者から聞くことがあります。

UTM(統合脅威管理)は、1台で複数のセキュリティ機能をまとめて担えるため、専任のIT担当者がいない中小企業にとって心強い存在です。しかし、導入の進め方を間違えると「通信が遅くなった」「結局使いこなせなかった」といったトラブルにつながることもあります。

この記事では、UTM導入でよくある失敗事例を5つ紹介し、それぞれの原因と回避策を解説します。これから導入を検討している方が、同じ失敗を避けるための判断材料になれば幸いです。


結論|UTM導入の失敗は5つのパターンに集約される

UTM導入でよくある失敗は、大きく分けて以下の5パターンです。失敗が起きやすい段階(導入前・導入時・導入後)とあわせて整理しました。

No.失敗パターン起きやすい段階
スペック不足で通信が遅くなる導入時
設定が放置されて形骸化する導入後
サポート不足で運用できない導入後
「全部入り」を選んで使いこなせない導入時
営業トークを鵜呑みにして過剰投資する導入前

共通しているのは、「導入そのもの」より「導入前の検討」と「導入後の運用」でつまずいているという点です。順に見ていきましょう。


そもそもUTMとは|「入れれば安心」という誤解

UTM(Unified Threat Management=統合脅威管理)は、ファイアウォール、アンチウイルス、不正侵入検知・防御(IDS/IPS)、Webフィルタリングなど複数のセキュリティ機能を1台にまとめた機器です。

個別に機器やソフトを揃えるより手間とコストを抑えられるため、中小企業のセキュリティ対策として注目されています

ただし注意したいのは、UTMは「入れれば安心」という魔法の箱ではないという点です。

バッファローが実施した調査では、中小企業の7割以上がUTMを「有効なセキュリティ対策」と認識している一方、実際の導入率は24.8%にとどまっています。背景には「管理・保守の手間」「ランニングコスト」といった導入後の悩みがあり、選び方や運用の進め方でつまずいているケースが多いことがわかります。

つまり、UTMは導入すれば終わりではなく、選び方と運用の両方が問われるということです。

※出典:バッファロー「中小企業のセキュリティに関する実態調査」(導入率・導入後の悩みに関するデータ)

失敗事例①|スペック不足で通信が遅くなった

UTM導入でよく聞かれるトラブルが、導入後に社内の通信速度が遅くなるというものです。

よくあるケース

たとえば、従業員数が多い企業が、コストを抑えるために小規模向けのUTMを導入したケースです。UTMはネットワークを流れるデータをすべてチェックするため、処理能力(スループット)が利用規模に追いつかないと、通信全体が遅延します。

特に「とりあえず安いモデルで」と選んでしまうと、後から人数が増えた際に対応しきれず、業務に支障が出るケースもあります。

原因

・UTMのスループット(処理できるデータ量)や同時セッション数を確認していなかった

・機能と価格だけを見て、処理性能を検討しなかった

回避策

導入前に、自社の利用人数・通信量・拠点数を整理し、それに見合ったスペックの機種を選ぶことが重要です。製品によっては事前にデモ環境を試せる場合もあるため、可能なら実際の使用感を確認しておくと安心です。


失敗事例②|設定が放置されて「ただの箱」になった

UTMは導入時の設定だけでなく、運用しながらの見直しが前提の機器です。ここを放置すると、せっかく導入しても効果が薄れてしまいます。

よくあるケース

導入時の初期設定のまま運用を続け、警告(アラート)が出ても意味がわからず放置——という状態です。結果として、UTMが「設置されているだけ」の状態になってしまいます。

原因

・運用・保守の担当者が決まっていない

・アラートや設定の意味を理解できる人が社内にいない

回避策

導入前の段階で、「誰が・どのくらいの頻度で・何を確認するか」という運用ルールを決めておくことが大切です。社内に詳しい人がいない場合は、運用サポートを提供している事業者に任せる選択肢もあります。


失敗事例③|サポート不足で運用できなくなった

コストを抑えようとしてサポート体制の薄い製品を選び、かえって費用がかさんでしまうケースです。

よくあるケース

費用の安さを重視してUTMを選んだものの、トラブルが起きた際に相談できる窓口がなく、外部の業者に都度メンテナンスを依頼することになり、結果的にコストが増えてしまった——ということも珍しくありません。

原因

・初期費用の安さだけで判断した

・導入後のサポート体制を確認していなかった

回避策

UTMは長期間使い続ける機器です。価格だけでなく、相談窓口の有無・対応スピード・保守の範囲を事前に確認しましょう。トラブル時に頼れる先があるかどうかは、運用の安心感に直結します。


失敗事例④|「全部入り」を選んで使いこなせなかった

高機能なUTMほど安心と思いがちですが、機能が多すぎて使いこなせないというのも、よくある失敗です。

よくあるケース

多機能な上位モデルを導入したものの、実際に使う機能はごく一部で、コストに見合った活用ができなかったケースです。

原因

・自社に必要な機能を整理しないまま、機能の多さで選んでしまった

回避策

「高機能だから良い」ではなく、自社に必要な機能から逆算して選ぶのが基本です。たとえばWebフィルタリングが必要なのか、メールのスキャンが必要なのかなど、自社の業務に照らして優先順位をつけましょう。


失敗事例⑤|営業トークを鵜呑みにして過剰投資した

最後は、導入前の段階で起きる失敗です。営業トークを鵜呑みにして、必要以上の契約をしてしまうケースです。

よくあるケース

「セキュリティ対策が義務化されました」「今入れないと危険です」といった営業を受け、内容を吟味しないまま高額なリース契約を結んでしまう——というケースです。

押さえておきたい事実:UTMの導入は法律で義務化されていない

ここは特に誤解されやすいポイントです。

UTMの導入そのものを義務付ける法律は、2026年現時点で存在しません。 そのため「UTMを入れないと罰則がある」というのは、正確ではありません。

ただし、注意も必要です。2022年4月に施行された改正個人情報保護法では、情報漏えいが発生した場合の報告が義務化されています。また、取引先からセキュリティ対策のレベルを問われる機会も増えています。

つまり「UTMという特定の機器が義務」なのではなく、「適切なセキュリティ対策を講じる責任」が高まっている、というのが正確な理解です。この線引きを理解しておくと、過剰な営業トークに振り回されずに済みます。

要注意な営業トークの例

・「義務化されました」(→ UTM導入を義務付ける法律はない)

・「今だけ特別価格」(→ 即決を迫る手法に注意)

・「他社製品は性能が劣っていて危険」(→ 根拠のない他社批判は信頼性に欠ける)

回避策

・2〜3社から相見積もりを取る

・見積書の内訳(本体・保守・リース料など)を確認する

・即決を迫られても、一度持ち帰って検討する


UTM導入で失敗しないための5つのチェックリスト

ここまでの失敗事例を踏まえ、導入前に確認すべきポイントをチェックリストにまとめました。

  • ☐ 自社の利用人数・通信量に合ったスペックか確認したか
  • ☐ 運用・保守の担当者と体制を決めたか
  • ☐ サポート窓口・相談先があるか確認したか
  • ☐ 自社に必要な機能から逆算して選んだか
  • ☐ 2〜3社の相見積もりを取り、内訳を比較したか

このうち一つでも「No」がある場合は、契約前に一度立ち止まって検討することをおすすめします。


UTMは「入れて終わり」ではない|導入後に大事なこと

UTM導入でつまずく企業に共通するのは、「導入をゴールにしてしまう」ことです。本来、導入は運用のスタートにすぎません。

・定期的に設定やログを見直す

・社員の働き方の変化(リモートワーク・クラウド利用の増加など)に合わせて見直す

・UTM単体で完結させず、必要に応じて他の対策と組み合わせる

近年は、クラウド利用やリモートワークの普及により、「社内ネットワークの出入口を守る」というUTMの基本的な考え方だけでは、カバーしきれない領域も増えています。UTMを軸にしつつ、自社の状況に合わせて対策を組み立てる視点が大切です。


まとめ|失敗の共通点は「導入前の検討不足」

UTM導入の失敗事例を5つ見てきました。多くの失敗は、導入前の検討と導入後の運用でつまずいているという点が共通しています。

  1. スペックとサポート体制は、導入前に必ず確認する
  2. 運用の担当者と体制を決めてから導入する
  3. 営業トークを鵜呑みにせず、相見積もりを取って冷静に判断する

UTMは、正しく選んで運用すれば、中小企業のセキュリティを支える心強い味方になります。大切なのは「とりあえず入れる」のではなく、自社の状況に合った選び方と運用設計を意識することです。

ご不安な方は、お気軽に相談ください。